「沖縄みらい地図アクション」こどもたちの未来に向けた、3つの新たな挑戦 ~対症療法から構造の転換へ~
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2026年2月、ケイスリーが推進する沖縄みらい地図アクションは、ミチシルベ2026のセッション「沖縄みらい地図アクション2026 〜現場の声から見えてきたこどもの貧困の課題構造を変える道筋〜」で、沖縄のこどもの諸課題をめぐる新たな挑戦について、公開作戦会議を行いました。
「縦割りの打破」「草の根での地域内連携」など、言葉としては使い古されていても、現場の閉塞感を打開するには、従来の枠を超えた全く新しいアプローチが必要です。まだ誰も正解を知らない難題に、立場を越えて向き合うために考え、行動し、対話したことをお届けします。
目次
この1年で見えてきた課題
2024年度に、ケイスリーは沖縄県内の71団体・104人の支援者や専門家へのインタビューをもとに、こどもたちを取り巻く複雑な課題の全体像を「沖縄みらい地図」として可視化しました。
地図には、戦争の影響や県民性、行政・支援側の課題、地域の課題などが、互いに絡み合うループ構造として描かれています。

体験活動がこどもに及ぼす影響、こどもの選択肢が広がらず世代間で貧困が連鎖するループなど、一つひとつの課題が孤立しているのではなく、深くつながり合っている現実が浮かび上がってきました。
地図を作りながら同時に見えてきたのは、構造的な問題でした。「支援現場」「企業」「行政」が、それぞれ懸命に活動しているにもかかわらず、お互いのニーズや動きが見えていないために、力が分散している現実がありました。特に企業は、そのリソースを活かした活動や働く従業員の中にはこどもがいる保護者もいるなど、根本的な課題解決に重要な関係者である一方、まだまだ関与は限定的なことが課題と認識していました。
地図を作成してからの1年は、大きく2つ「企業へのアプローチ」と「セクター横断の協働」を模索してきました。具体的には、沖縄県のSDGs推進課やこども家庭課、経済団体などと、それぞれの取り組みを有機的に繋げて、企業とこども支援団体との協働ワークショップや対話を重ねてきました。
こうした取り組みを重ねてみえてきたのは、3つの構造的な課題でした。
支援現場と企業の解像度のズレ
支援現場と企業、それぞれ想いはあるものの、具体的に何が不足しており、何がどう役立つか、お互いに見えていない状況がありました。ワークショップでは、話すだけでも発見があったという双方の声が多く、まずはお互いのニーズを知ることと顔の見える関係を構築することが、協働の第一歩だと確信しました。
福祉と経済が出会う場の不在
解像度が上がらない最大の要因は、両者が日常的に交わる場が地域に存在しないことです。これは行政組織も同様で、こども支援関連部署(福祉)と経済・企業関連部署(経済)は、それぞれ高い専門性を持つがゆえに、役割が分断されがちです。支援現場と企業、国・都道府県・市町村、そして各分野が持つ強みを繋ぎ合わせる横断的な対話の場が、今の社会インフラとして欠けていることが分かりました。
善意を持続させるインセンティブの不足
こどものために行動したいと願う企業は多くあります。しかし、ボランティアや寄付といった善意だけでは、活動の規模や継続性に限界がきてしまいます。企業のリソースが持続的にこどもたちへ循環するためには、そのアクションが社会的に評価され、本業のプラスになるような新しい仕組み(インセンティブ)が必要です。
これら課題を打破し、構造を変えていく道筋を描いた全体構想がこちらです。
構造転換に向けた3つの挑戦

これまで多くの支援は、目の前の困りごとへの対応(対症療法)に追われてきました。もちろんそれは大切なことです。しかし現場の孤立、資金の壁など様々な理由により、なぜその困りごとが起きるのかという根本原因へのアプローチは十分ではありませんでした。
私たちは地図を羅針盤に、社会構造そのものを変えるためのこの3つの新たなアクションを始動させます。
善意だけに頼るのではなく、仕組みで解決する。それが、今回の挑戦の核心です。
地図を作って終わりではなく、ここからが本番です。
まだまだ構想段階で、形にするため日々動きながらブラッシュアップしているところですが、それぞれのアクションについて、現段階の方向性を共有したいと思います。
挑戦①【拡げる】キャラバン
〜地域の福祉×経済×教育横断で、顔の見える関係性をつくる〜
同じ地域にありながら、普段はなかなか交わらない福祉、経済、教育それぞれの団体や部門。
実は、お互いの強みや困りごとを知るだけで、「あ、それならうちの空き倉庫使えるよ」「その技術、こどもたちの体験学習になりませんか?」といった、意外な解決策が生まれることが多々あります。
キャラバンは、市町村単位で、行政(こども担当部署、商工担当部署、教育委員会)、支援現場、そして地元企業が「こどもたちのために」を合言葉に、地図をみながら持ち場を越えてつながる。そんな顔の見える関係性を、沖縄県内すべての市町村につくっていきたいと考えています。

■なぜ市町村単位なのか
課題やニーズは地域によっても大きく異なります。沖縄の地域区分としてよく使われる「北部・中部・南部・離島」といった区分でも、例えば中部の中でも沖縄市、嘉手納町、北谷町、読谷村など、それぞれの地域特性や課題は全く異なり、これらを一括りにするのは、現場の感覚からすると少し広すぎます。
「あの交差点の角が危ないよね」「あの建物、昔は○○だったよね」というローカルな共通言語が通じる生活圏だからこそ、課題に対する共感も深く、顔の見える関係性も築きやすくなるのです。
■先行地域での試行から標準パッケージをつくる
まずは読谷村をはじめとする先行地域などで試験的に開催し、行政と民間、福祉×経済×教育の現場が無理なく参加でき、お互いを理解できるような標準パッケージを整理します。
その上で、企画・運営ノウハウを事務局が無償で提供し、どの市町村でもスムーズに開催できる体制を整えて全ての市町村へ展開していきます。
特別な先進地だからできるのではありません。沖縄みらい地図というツールをきっかけにして、初めに声をあげる人がいれば、どの市町村でも対話を始めることができます。
■点から面へ、沖縄全体が変わる
一つひとつの地域でキャラバンが開催され、各地に顔の見えるチームができると、沖縄はどう変わるのか。
自然な協働が生まれる
困りごとが起きた時(あるいは起きる前に)、地域内で自然と支え合い、スピーディーに課題に向き合えるようになります。
県全体で地域の実情に沿った制度や取り組みが生まれやすくなる
沖縄全体でこども支援現場の課題やニーズが、これまでにない高い解像度で把握でき、地域の実情に沿った効果的な制度や取り組みが県全体で生まれやすくなります。
シンカとの相乗効果
この後ご紹介するシンカとも強く連動します。キャラバンで見えてきた地域の実情を踏まえた解決策を設計でき、また、実証事業や実装に向けたフィールドとしても地域内でスムーズに連携が可能になります。
こうしたお互いの顔が見える関係性を地域単位で地道につくっていくこと。
一見遠回りに見えますが、中長期的に見れば、これが最も重要で、レジリエンスのある社会基盤になると私たちは考えています。
挑戦②【深める】シンカ
〜沖縄全体で重要課題を共有し、解決策を実証する〜
地図から見えてきた悪循環のループやキャラバンで蓄積される解像度の高い地域の実情。これらの中にはどうしても個別の努力だけでは解決できない制度の穴や構造的な欠陥が存在します。これらに対し、既存の枠組みを超えて新しい解決モデルを開発・実証するプロセスがシンカです。

わかりやすくいえば、沖縄のスタートアップ支援で行われている実証実験事業のこども版ともいえる挑戦です。
行政、企業、NPO、研究者などが組織の壁を越えて、「ここを変えればシステム全体が変わる」という重要課題を特定。そこに対する解決アイデアを公募し、行政や民間、県内外から複数のアイデアを組み合わせたり、当事者との対話を重ねたりしながら、前例のない解決策を共創します。
■シンカの特徴
プロセスを重視
トップダウンで決めるのではなく、関係者で「どこに注力すれば構造が変わるか」を合意形成するプロセス自体を重視します。それにより、重要課題を全員が自分事として捉え、自分の持ち場でできることや枠組みを超えた協働に繋がると考えるからです。もちろんただ時間をかければよいわけではありません。10年たって何も決まりませんでは意味がない。スピード感と納得感のバランスを意識しながら、確実に前へ進めます。
前例のない共創
よくある実証事業のように、提案されたものを審査して採択して終わりではありません。提案されてからが本当の勝負です。提案された解決モデル案同士を組み合わせたり、当事者との議論やセクター横断での共創を経て抜本的にブラッシュアップしたり。「共通目的の達成に向けて、本当に意味があるのか?」を徹底的に議論して試行します。
そのために、どうすれば実現できるかを構想する未来志向の「共創ラウンドテーブル」を開催し、誰がどう参加するのかも含めてデザインしていきます。
キャラバンとの循環
キャラバンで拾い上げた解像度の高いニーズをシンカの種にし、シンカで実証された解決モデルをキャラバンを通じて全県へ広げる。この循環をつくります。
■小さくても、熱のある個から始める
すでに関連する複数の国や県の機関などへアプローチを始めていますが、やはり前例のない取り組みであり、いきなり組織として公式に参加するのはハードル高いという感触です。
だからこそ、まずは個人として志を持つ人を仲間にしていきます。
組織ではなく、一人の人間としての熱意でつながり、キャラバンで把握する地域の実情、国や海外機関と連携したアプローチを含め、少しずつ、でも確実に議論を形にしていきます。
誰も正解を知らない難題に、全員で挑む。悩み、試行錯誤し、沖縄から新しい社会モデルを生み出していくプロセスそのものがシンカです。
挑戦③【動かす】チャイルドレンズ投資
〜お金の流れを変え、こどもに優しい企業が評価される仕組み〜
こどもの諸課題を構造から変えようとすると、実は企業のあり方が極めて重要なカギを握ることに気づきます。なぜなら、こどもの保護者の多くは企業で働いているからです。
保護者に時間的・精神的な余裕があるかどうかは、こどものウェルビーイングに直結します。しかし、硬直的な働き方や余裕のない組織文化の中では、保護者の疲弊がそのままこどもへのしわ寄せとなってしまいます。また、不安定な雇用や低賃金も、こどもの貧困の直接的な要因です。
もちろん、自社のリソースを活用してこどものために、と熱心に行動する企業は沖縄にも多くあります。しかし現状では、そうした取り組みの多くは企業の善意で行われており、それが社会的に評価されたり、本業のプラスになったりするインセンティブの仕組みが不足しています。
純粋な想いは尊いものですが、活動の規模を広げ、持続可能なものにしていくためには、こども想いの企業が、ビジネスの面でも報われる仕組みが必要不可欠です。
■チャイルドレンズ投資という新たな資金循環
そこで私たちが目指すのが、こどもの未来を考えることが、企業の成長につながる新しい資金循環の仕組みです。具体的には、投資家や金融機関が企業を評価・融資する際、従来のリスクやリターンに加えて、その企業がこどもの権利やウェルビーイングにどう影響を与えているか、という視点を判断基準に組み込みます。
これが社会に実装されれば、こどもにやさしい企業に自然とお金が集まり、社会全体で企業の行動変容を促すことができます。

■世界的な潮流と日本での追い風
これは、私たちが突飛なことを言っているわけではありません。グローバルでESG投資やインパクト投資が拡大する中、投資判断において定着しつつあるジェンダーや環境の視点に次ぐ、新たなスタンダードとしてこども(Child-Lens)への影響を考慮する動きが強まっています。
少子化やこどもの貧困が深刻化する日本においても、公的資金や寄付の限界を超え、民間資金による新たな資金循環を生み出すことが急務です。現在、海外の国際機関と連携した日本展開のプロジェクトが水面下で進んでおり、また国レベルでも関連した新しい枠組みが動き始めようとしています。国内での事例はまだこれからですが、確実に追い風が吹いています。
■これにより、社会はどう変わるか?
評価される仕組みの確立
従業員が子育てしやすい環境を整えているか、こどもの健全育成に寄与する事業をしているかといった企業の行動が、資金調達が有利になるなど、ビジネスの強みになります。
こどものための社会リソースが増加
これまでNPOや行政に頼りがちだったこども支援現場に、民間企業の資金やノウハウが直接流れ込みやすくなります。また、教育や保育、小児医療など、こども向け事業そのものがビジネスとして成長しやすくなり、投資家からの働きかけによっても、社会全体の変化のスピードが加速していきます。
保護者の働き方が変わる
企業が評価されるために行動を変えれば、保護者の働き方も変わっていきます。保護者の働き方が変われば、家庭にゆとりが生まれ、親子関係がより良い方向に変わり、結果として、こどものウェルビーイング向上やこどもの諸課題対する予防につながると考えています。
これは単なる新しい投資手法の話ではありません。
こどもを大切にする企業が有利になる社会へ経済のルールそのものをアップデートし、社会のあらゆるリソースをこどもたちへ向ける挑戦です。
日本全体への展開も同時に進めていますが、まずはこの沖縄から、新しい時代の風を吹かせていきたいと考えています。
3つの挑戦で目指すゴール
地域内の循環
沖縄の全市町村で行政・支援現場・地元企業が、分野横断で顔の見えるチームとなり、地域の人や組織が地域のこどものために支え合っていること。
根本的な課題解決
対症療法だけでなく、課題の根本的な解決につながる新しいアプローチが動き出していること。
協働文化の波及
この新たな協働のあり方が広く認知され、こども分野を超えて他の社会課題へ波及しはじめていること。
課題解決を超え、未来を生み出す共創し続ける生態系へ。
それが、沖縄みらい地図アクションが目指す場所です。
これは、私たち事務局だけで完結するものではありません。地元の企業、行政、そして支援現場のみなさま。それぞれの想いと強みを持ち寄ることで、この地図は希望の地図へと変わっていきます。
こどもたちの未来のために、新しい一歩をともに踏み出しましょう。
本件に関するお問い合わせ・連携のご相談
ケイスリー株式会社 沖縄みらい地図アクション事務局
